前回投稿記事の続編です。
バイクのタイヤ交換後に実施すると効果的な
車両の点検・調整項目を2つ、紹介します。
今回のメンテナンスでも、
定められている許容値や復旧作業時の
規定トルク値は、整備マニュアルを根拠にしました。
前輪 フロントフォークのねじれ点検
フォークのねじれは、バイクを倒してしまった時や
大きなギャップに前輪を落とした時、
ぶつけてしまった時など
前輪やハンドル周りに大きなショックをかけてしまうと
発生することがあります。
例えばこんな時…
フロントフォークのねじれ点検に
準備する資材と工具類は以下のとおりです。
1 アルミ角パイプ(1m程度) ×2本
2 タイラップ
(アルミ角パイプを固定する結束バンド)
3 10mmソケットレンチ
4 19mmアーレンレンチ
5 トルクレンチ(大・中)
ねじれの点検
前輪のタイヤ交換時はもちろんですが
ハンドルをニュートラルな位置に
構えた時に、
前輪の向きに違和感を感じた時も
有効な点検です。
過去にバイクの転倒や
前輪にダメージを受ける運転をしてしまった場合
フォークにねじれを発生させている可能性があります。
フロントフォオークに
2本のアルミ角パイプを
タイラップなどで固定します
NGな場合
フォークに固定した2本のパイプがズレている
OKな場合
フォークに固定した2本のパイプが一致
フォークが左右で捩れている場合、
フォークの上下に固定したアルミパイプがズレます。
ねじれが無い場合は、
固定されているアルミパイプにズレがなく
上下が一致して見えます。
修正準備
フォークのねじれ修正のために
フォークを連結しているボルト類を緩め、
フリーな状態にします。
1 フロントホイルアクスルピンチボルト 10mmソケット
2 フロントホイルアクスル 19mmアーレン
3 ロアーブラケットピンチボルト 10mmソケット
修正要領
修正1 ハンドルを保持してフォークを上下に作動させる
一見すると
力技のように見えますが
ホークを固定している
各ボルト類が緩んでいるので
フォークを上下させることで
本来の正しい位置に戻り、
自然に修正されます。
上記のやり方を数回試みて、
まだ修正されない時は、次の段階に入ります。
修正2 前輪を固定してハンドルによる修正
前輪を脚で挟んで固定します。
ハンドルを修正したい方向へ
力ずくで回します。
修正→確認を繰り返します。
以上のやり方で大体のねじれが修正できます。
確認・復旧
フォークの修正を終えたら
再度ねじれが無いか確認します。
1 フロントホイルアクスル
19mmアーレン 72N/m
2 フロントホイルアクスルピンチボルト
10mmソケット 21N/m
(内側→外側→内側の順に締める)
3 ロアーブラケットピンチボルト
10mmソケット 20N/m
(上→下→上→下の順に締める)
今回のように、運転に直接影響のある
重要な部分の復旧時には、
しっかりとトルク管理ができるよう
トルクレンチの使用を推奨します。
ただでさえ、素人整備なのですから、
勘トルクではなく、正規のトルクを守りたいものです。
後輪 ドライブチェーンの点検
Tenere700のドライブチェーンの点検要領は
YAMAHAの取扱説明書も参考にできます。
ドライブチェーンの点検要領:「取扱説明書」6−12ページを参照
ドライブチェーンの点検時、準備する工具類は
下記のとおりです。
1 ノギス
2 27mmソケットレンチ
3 10mmオープンレンチ
4 12mmオープンレンチ
5 トルクレンチ(大・中)
点検・測定要領
・ギアをニュートラルにする。
・サイドスタンドを立てる。
・図1のドライブチェーンガード端の下側でドライブチェーンを下側に押す。
・図2の「セット長A」をノギスで測定する。
許容値:43.0-48.0mm
たるみ限度:55.0mm
ギアをニュートラルにすること、
スタンドを使用して車両に自重以外がかからないようにすることが測定の条件です。
「取扱説明書」や「サービスマニュアル」では、
サイドスタンドを立てた状態で記載されています。
私は、センタースタンドを立てて整備しますので、自己責任です。
また「サービスマニュアル」では たるみ限度:55.0mm
となっていますので、許容範囲は広めだと思います。
調整要領
1 リアホイルアクスルナットを
緩めます。
27mmソケット
2 ロックナットを緩めます。
12mmオープン
3 アジャスティングボルトで長さを
調整します。
10mmオープン
アジャスティングボルトを
車体の後ろ側から見る
イメージでいきますと…
時計の針が進む方向(右回り)で
ボルトが縮む=チェーンが緩む
半時計方向(左回り)に回すと
ボルトが伸びる=チェーンが張る
私はこの作業が苦手です。
作業の度に、以下の2点を思い知らされます。
1 27mmのアクスルナットを緩めた状態で、張り具合を規定範囲内に調整しても、
最後に27mmのナットを締め付けると、チェーンも引っ張られてパンパンになる。
故に、27mmのナットが緩んでいてフリーな状態では、
チェーンはかなり緩んだ状態でもそこそこ規定値に入る。
2 アジャスティングボルトの回し方は、せいぜい半回転づつで良い。
横のメジャーが刻んであるプレートは、目安でしかなく、
当初の位置から、1目盛分も動かない範囲内で調整可能
故に、調子に乗ってグイグイ回すモノではない。
何度かトライ&エラーを繰り返しながら、規定値に入れます。
最後にはリアホイルアクスルナットを 27mm 105N/m で締め上げて
ギア=ニュートラル、サイドスタンド使用の状態で確認します
復旧時の確認事項
復旧の際に、チェーンが車体に対して並行(?)、真直ぐに取り付いているか確認します。
「サービスマニュアル」4−24の項目です。
スイングアーム上部のチェーンガイドのリブの部分と
チェーンのコマの中央部分=サイドプレート間を
合わせます。
チェーンの裏側から見た画像
リブとチェーンのサイドプレート間を合わせる
上記で紹介した点検項目は、
日頃から違和感や異常を感じた時に実施できる内容ですが、
タイヤ交換などの大きめの整備と併せて行えば、
時間や労力の節約ができて効果的だと思います。